本記事では、退職代行サービス(以下、退職代行、または代行会社)を使われて従業員に会社を退職された際に、会社側がどういった対応をすればよいかを記載しております。
あくまで使われた会社側の記事ですが、退職代行を使って会社を退職しようか迷っている方の背中を押す内容にもなっております。
なぜなら本記事は、退職代行を使われた会社が、退職代行を使った従業員に対して連絡する、または従業員に対して損害賠償請求を起こしてまでして引き留めるべきだという内容ではなく、依頼者の退職を素直に認め、退職に向けて粛々と手続きを済ませることをお勧めしているからです。
労働者には退職する権利が法的に認められていますので、それを覆してまでして引き留めようとすること自体が法に違反する行為です。
当然、退職の仕方(退職代行を使うこと)にケチをつけても法が勝ります。
民法627条「退職の2週間前に退職の告知を行えば問題なく退職できる」
(2週間は土日祝を含みます 例:3月18日退職届提出→3月31日退職)
ちなみに僕は、2022年1月に退職代行を使って会社を退職しております。
当時、現場に見合わせたわけでもありませんので、会社がその際にどういう状況に陥り、どういう動きを見せたかは知る由もありませんが、少なくとも退職代行を使われた会社から強い引き留めや損害賠償請求をされないことを事前に確認しており、自分が不利な状況に追い込まれることが無いことを確認の上、本サービスを使って会社を退職しております。
また、退職代行サービスについての説明記事を作っておりますので、退職代行サービスについてよく分からない、あるいは、もっと詳しく退職代行サービスについて知りたいという方は、下記の記事をお読みください。
退職代行を使われたら考えること
慌てないようにしましょう。
素直に事実を受け止める
「そちらにお勤めの〇〇様の代理でお電話させていただきました弁護士事務所〇〇の〇〇です。〇〇様から退職の旨の連絡を受けましたので、手続きをさせていただきます・・・」
またはファックスで
「〇〇社にお勤めの〇〇様からの依頼で、ご連絡差し上げました。一身上の都合により〇〇様は〇月〇〇日で退職させていただきます。今後の予定につきましては・・・」
こんな感じでおそらく代行業者より連絡が来るかと思います。
仮にですが、該当する従業員に恨みを持つ「第3者」がいたとして、本人に嫌がらせをするつもりでこのようなことを報告してくるでしょうか?
あったとしても、もっと別な言いがかりをつけてくるはずですよね。
過去に退職代行を使われた事例が無い会社の場合は、状況判断に苦しむと思いますが、退職代行は、会社勤めをされている方の半数以上がその存在を知っています。
2021年4月のアンケート結果のようです。
それから月日が流れているので、さらに認知されていることでしょう。
まずは
本人が退職する意向である
ということを素直に認めましょう。
従業員への連絡も不可
次に起こることは、代行会社がこの旨を伝えてくるでしょう。
電話であれファックスであれ、いずれにせよです。
なぜなら
依頼者との約束を交わしているから
これは単なる仲介では無く、依頼者と代行会社の間で「契約書」あるいは「委任状」を交わしております。
失敗したら大きな責任が発生するのです。
代行会社によっては一部、書面等はありませんが(LINEで依頼する)、先ほども申したように、退職は民法上定められているという法的根拠によるものがあるからです。
すなわち、代行会社が
本人に代わって会社への退職の連絡、
退職後の書類送付等の一切を任されている
よって、本人への連絡が出来ないことを理解しましょう。
再発防止を検討
繰り返しますが、使われたことは事実だということを強く認識すべきです。
少なくとも
自分たちは何も悪いことをしていないし、辞めた従業員に問題がある
と、ぼやかないことです。
通常は口頭で退職する旨を伝えるべきが、なぜこのような手段を使ってまでして退職したかについては
会社側に問題がある
と考えましょう。
この際に
色々と面倒かけてしまっていたからな・・・
と、素直に思えるのであればまだ救いがあります。
今となっては退職代行は「使われるもの」だということを理解しましょう。
これは従業員の年齢に関係なくです。
なぜなら
こちらも2021年4月のデータで、すでに5人に1人が退職代行を使って退職しているのです。
「退職代行を利用するかもしれない」に至っても存外に占めていますので、4人に1人が退職代行を使って会社を退職する時代に我々働き盛りの人間は仲間入りしています。
つけ焼き刃にするのではなく、今後、二の矢三の矢と起こりうるものだと、心に念じておきましょう。
使った本人も辛い
「あいつにはさんざん多くのことを教えてやったのに!」
「恩を仇で返しやがって!裏切り者が!」
などと思わないことです。
依頼者は出来れば口頭で伝えたかったはずですが、先ほども書いたように、それが出来なかったので、このような手段を使ったのです。
使った本人は心底
不安で不安で仕方がありません。
もしかすると怖くて家で泣いているかもしれません。
素直に分かってあげましょう。
社内への報告
会社としては
「これ以上、退職代行は使われたくない」
と思うはずです。とはいえ、社内報告は必須です。
ほっとくわけにはいきません。
社内の従業員には「一身上の都合」として、伝えるかと思います。
同時に、最初に電話を受けた部署等から退職代行が使われたことがどんどん社内に広まっていきます。
これは仕方がないことです。
仰天する従業員を想像するだけで胸が痛くなるでしょうが、先ほども書いたように、再発防止に取り組みましょう。
ひどい場合は内部告発が発覚し、一気に会社の信用がガタ落ちする可能性すらあります。
退職代行を使われたら取るべき行動
退職理由について
代行会社から伝えられると思いますが、一部、納得のいかない理由もあります。
上司によるパワハラやモラハラ、休日出勤の強制などの外発的なものではなく
「ほかにやりたいことがある」
なぜこのような嘘をつくのでしょうか。
依頼者の心理的側面として「角を立てたくない」と思う気持ちがあるため、本音を言わない可能性があります。
もう少し分かりやすく言えば
「素直に辞めさせてもらえればそれでいい」(と考えている)
自ら退職する旨を伝えられない状況なので、なおさらその可能性があります。
他にも「無難な退職理由」を伝えられる可能性もありますが、納得できずに根掘り葉掘り代行会社に聞いたところで、その会社にいる人では無いので分かる訳がありません。
ですが、本当に納得できないのであれば、他に無いか聞いてもらうように代行会社にお願いしてみるのも良いかもしれません。(本人への連絡はNG)
ちなみに僕は上に記載したことを退職理由にしたのですが、完全に間違っていました。
依頼した弁護士さんには迷惑かけてしまったなぁと、お金を払っていたとはいえ、申し訳ない気持ちになりました。
(※退職代行実施日当日、弁護士さんが困惑し、僕に対して会社に電話したらどうかと言ってきたのです。下記記事の見出し8「代行当日」を参照)
上司から手紙が来てしまい、内容を確認すると、「何で退職したいと思ったか教えてほしい」ということでした。
「ほかにやりたいことがある」ことについては何も記載せず、自分に対する待遇、扱い、組織崩壊等によるモチベーション低下など、ブラック感満載の手紙を書いて上司の自宅に送ったのです。
クソ真面目な自分に対して、今となれば腹が立ちます笑。
なぜなら残業代や休日出勤分請求などもすればよかったと後悔しているからです。
退職届
本人の字で本人の印鑑が押されているものなので、まぎれもない真実であることが納得してしまいます。
送られてくる日がいつなのか確認しましょう。
あるいはデスクの引き出しにしまってあるかもしれません。
大抵は代行実施日の翌日くらいでしょうか。
本人から送られてくる、またはすでに、デスクの引き出しに入っているなどです。
手元に届いたら退職手続きを粛々と進めます。
有給
雇用期限の定めのない無期労働契約(正社員やパート)であれば、有給が残っている可能性もあります。
退職日までの出勤すべき日と就業規則に記載の本人の有給数を確認し、残りの休日分に充てます。
このあたりは管理する方であればお分かりでしょう。
それ以前に、本人から代行会社に有給日数を伝えていることが多いので、代行業者から電話があった際に確認しましょう。
引継ぎ・私物
・引継ぎ
書類があるのであれば、どこにあるか代行会社に確認を求めます。
万が一引継ぎ書類が無くて、業務に支障が出てしまうのであれば、代行会社を通して相談することになります。
ですが、就業規則に退職時の「引継ぎの要件」が書かれていない場合は、引継ぎ書類を残さない退職者も一定数いると思いますので、就業規則には明記しておいた方が良いですね。
大きな会社ほど、そういうところはしっかりしているかと思いますが、いざという時に困る可能性も示唆しておきましょう。書かれていない場合は、何も抵抗できません。
依頼者が
「就業規則に引継ぎの記載が無いので何も作らなかった」
と言う可能性もあります。
用意周到ですが、退職代行ってこんなものですし、利用者は思っているより必死です。
僕は就業規則に引継ぎが明記されていたので、一応作りました。
一方で、この件が従業員にとって一番大変かと思います。
ましてや、膨大な仕事を抱えていた人に辞められると、仕事の振り分けはおろか、依頼者にしか分からないことが多々あるので。。。
とはいえ、いなくなったのは事実ですから、仕事の割り振りを決めて粛々と進めていくしかありません。
・私物
あった場合は、どなたかが段ボールに詰めるなどして本人宛に送ります。
かなり机の上が散らかっていたり、机の中にも多くのごみが残っている可能性もあります。
常識的に考えてそれくらいは後処理をしていくものと考えるかもしれませんが、それをしようものなら周りの従業員の目もあるので
「こいつ何か怪しいぞ」
と悟られてしまうので、未処理の可能性も十分にあり得る話です。
残った従業員としては
「少しくらい片付けていけよ」
って感じるでしょうが、単にそれが出来なかったということです。
本人からの返却物
依頼者の社員証や名刺、健康保険証等の返却はいつになるか、代行業者から連絡がある、または直接確認しましょう。
仮に他に足りないものがありそうでしたら、代行会社を通して本人に伝えてもらいます。
特に、機密情報を依頼者が持っている可能性があると考えられるのであれば、必ず返却を求めるようにします。
退職後の書類
当事者が退職後にほしいリストを代行業者に伝えるはずなので、確認しておきます。
とはいえ、会社によっては事前に書面で提出を求めるところもあるかと思います。
これらの書類は退職者に送ることを法的に決められているので、退職までの間に確認することをお勧めします。
※労働基準法第22条1項
(退職時等の証明)
第二十二条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
代行業者に対してやってはいけないこと
ごねて反抗する
退職代行を使っての退職は法的に何ら問題の無いものですので、反抗してはいけません。
どれだけ説得しても明日から依頼者が会社に来ることはありません。
素直に要求を呑みましょう。
代行会社に罵声を浴びせるなんて言うまでもないです。不利な立場になるだけですし、周りの従業員も心底
「馬鹿な上司だ」
と思う人も一定数います。
退職の要求を受け入れない
上に同じく、どうあがいても当事者は帰ってこないのですから、素直に退職届が送られてくるのを待つしかありませんし、「受け取っていない」なんて言おうものなら、訴えられる可能性もあります。
また、意地でも引き留めるために
家族に連絡を取って当事者と話をするようなこともやめましょう
依頼者がかわいそうです。
冒頭にも申しましたが、民法627条1項では「退職の自由」が保証されています。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する。
また、労働基準法第5条に強制労働の禁止が定められています。
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
まとめ
今回は、退職代行を使われた会社側が取るべき方法として記事を作成しました。
従業員は退職の自由を認められているにも関わらず、直接言い出せない理由として
・強い引き留めに会う
・言い出せない
この2点が大きな理由です。
会社全体として、退職代行を使われた事実をしっかり受け止め、今後のよりよい社内環境を構築することが最大の課題と言えるのではないでしょうか。
そのためには、パワハラやモラハラ等の言葉の暴力、休日返上の変則勤務などを減らしていき、従業員が安心して働けることが出来る気持ちを少しでも持てるようにイノベーションしていく必要があるかと思います。
日本で働くすべての人が、働きやすく、職務に精通できる職場になることを願っております。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。